ネパール
国境から街までは険しい山道だ。
ネパールでの長距離移動は必ず山道を経由する。バスはかなりのスピードを出して山を登ったり下ったり。時には車の天井に頭をぶつけそうになるほど飛び上がる。しかも前方の車が遅いと判断すると、容赦無く追い越す。もしカーブから対向車が来たら、僕らは天国へ再び戻ることになるであろう。その時は是非もう一度、満天の星空を拝みたいものだ。
そんなこんなを考えているうちにバスはレストランへと停車した。
そこは山の中にあり景色も最高だ。ただツーリストらしき多くの人々の姿が目に付く。恐らく、多くのバスドライバーがここを訪れ、 マージンを頂いているのであろう。値段も少し高めであった。
ネパール初の食事はカレー、こちらではこのセットをダルバートと呼ぶ。
ナン、チャパティ(小麦粉を薄く伸ばして焼いた物)もしくはライス。ダルと呼ばれるスープに野菜の炒め物、ピクルス、時にチキンやマトン。ネパールやインド、チベットもだが基本的に牛と豚は食べない。もちろん、こちらにはベジタリアンが沢山いる。肉を全く扱わないレストランも珍しくはない。
肝心の味は日本人には少し馴染みにくいかもしれない。だが僕にとっては好物である。しかも大体の店は、ライス、チャパティ、ダルはお代わり自由。最高だ。
昼食を終えるとバスは再び走り出す。幾つもの小さな村を抜けて、山を下って行く。気温も次第に上がってきた。車やバイクの数が増え、クラクションが鳴り響く。今ではTシャツでも汗ばんでしまう熱気に包まれている。窓を開けていると、所狭しと黒い排気ガスが車内に流れ込む。カトマンズへやってきた。
国境からここまでは約3時間半、乗客は僕らしかいなかったので快適な移動であった。ちなみに1人500ルピー。大体500円ぐらいである。違う国に来ると、やはり人々の顔つきや空気も違ってくる。バスはカトマンズの街中で止まった。意気揚々と降りたのはいいが、右も左も分からない。取りあえず当てずっぽうに進む。
チベットで一緒であったグループはここで二手に別れる。
僕は日本人の男性と二人で宿泊する事に。道行く人々に場所を訪ね、何とかホステルまで辿り着く事が出来た。ツインベットルームで450ルピー。そんなに広くはないが、ベランダ付きだ。
こちらではAC(エアコン)付きの部屋は値段が高くなる。大体の安い部屋には天井にファンがついている。たまに壊れていて動かない事もあるが、基本的に暑いネパールやインドでは必需品なようだ。
カトマンズは沢山の店、人々で賑わっている。観光客に混じって、客引きも沢山居るようだ。とにかく今の時期はとても暑い。少し歩けば直ぐに汗をかいてしまう。ここには日本食レストランも幾つかあり、久しぶりに親子丼やカツ丼、ラーメンなどを楽しんだ。値段は250ルピー前後。僕らにすると格安だが、現地人にとっては、とても高価なようだ。
カレーの他に有名な食べ物といえばモモである。
日本食でゆう餃子みたいなものだ。見た目は小籠包に近い。ベジタブルのみや、チキンモモ、チーズモモなど種類も様々なようだ。一皿だいたい40ルピー前後。安くてお手軽な料理である。
街を散策していると、楽器屋がちらほらと目に付く。こちらの民族太鼓、通称”マダル”と呼ばれる太鼓のスモールサイズを購入した。値段は交渉の末、650ルピー。音色はタブラに近い。宿の屋上で休んでいると、スタッフ達が興味津々に太鼓の周りに集まってきた。徐に叩き出すのだが、やはり現地人のリズムは少し違うようだ。僕らはチベットで買ったベルと日本から持ってきたオカリナでセッションをして盛り上がる。音楽は人々に笑顔をもたらしてくれるようだ。
先の旅でもこの楽器がキーアイテムとなる。だがこの時点では、そんな事を考えもしていなかった。
つづく。